無題(都市の末梢神経が、〜)/カワグチタケシ
敷を渡る。鉄の匂いが漂い、そこから先は都市の領域になる。
ゴシック様式の長い踏み切りを過ぎると突然、線路は地球の中心へと吸い寄せられていく。もう川を渡ることはない。川底の更に下を、掘割の下をくぐって線路は伸びる。地表を凍らせる風が届かない線路は、真冬でも生温かくふるえている。都市の末梢神経。そして地上の陽が沈む。地表の温度が急激に下がる。
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埋立地を切り開きセメントで固めた造船ドック。都市の末梢神経にかすかな波が打ち寄せている。冷えた風が海に向って吹いている。造船ドックの跡を見下ろしながら、スペイン風に壁にタイルを貼りつめたバルで、僕たちは酒を飲んだ。スペイ
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