無題(都市の末梢神経が、〜)/カワグチタケシ
都市の末梢神経が、ところどころでむきだしになっている。むきだしになった都市の末梢神経に眠らない水が引き寄せられる。四谷には初冬の冷たい雨が降り、お茶の水では真夏の日差しに輝く神田川の汚れた水面に鯉が背中の鱗を光らせて跳ねている。茗荷谷。茗荷谷には古くて深い井戸がある。東京メトロ丸の内線。
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高く晴れ渡る果樹園の丘、色づきはじめた林檎の実に冬のはじめの傾いた薄い光が射している。僕たちは午後から出発した。
まどろむ私鉄は田園地帯を走り、乗客たちは光のなかで居眠りしたり目覚めたりしている。背中があたたかい。果樹園は遠く後方に流れ去り、列車は雑草の生い茂る河川敷を
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