白猫とお婆さん。/もののあはれ
 
「いらっしゃいませー。」

 『すいません。』
 『マイルドセブンの1ミリをワンカートン下さい。』

 「はいはい。」
 「マイルドセブンねー。」

 お婆さんはこの町にはおよそ似つかわしくない。
 ゆったりとしたペースで。
 ペタペタとサンダルを鳴らして。
 煙草を積んである棚のほうに歩いて行きました。


 ガッシャンコン。ガッシャンコン。


 遠くの工場の音が響く店内で。
 いつの間にか白猫がお婆さんに寄り添うように近づいて。
 その所作を静かに見つめていました。
 お婆さんはゆっくりと煙草のたくさん詰まった棚を眺め。

 「マイルドセブン、マイ
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