線香花火して死のう/しゃしゃり
女にふられたので、
それは夏のはなしだけれど、
線香花火して、死のうと思った。
あの子とふたりでしようと買ったのに、
できなかった花火が車のうしろトランクに、
いれっぱなし。
いれっぱなしの夏。
いれっぱなしのおもいで。
もう冬だ。
たのしかったはずの冬だのに。
デパートにいくと、
ジングルが流れっぱなしのうえ、
「世界でいちばんしあわせになるクリスマス」だとか、
ふざけたことをぬかしてやがるから、
放送室にのりこんで、
お経でも流してやろうかという気にもなりました。
疎遠になってしまった親戚の家の前を、
自転車で通り過ぎるとき、
ケーキのひとつでも、
持って
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