師走空/海月
師走の空は高く澄んでいて
雲は静かに流れています
朝方は特に冷えて息は白くなり
凍える手で自転車のハンドルを握る
力が入らなくてフラフラと彷徨うばかり
小学生の低学年の頃に読んだ
「くじらぐも」そんな毎日を夢見ていた
虹は雲に渡るための橋
雲の上には王国が広がっている
いつからだろう
そんな事も想わなくなったのは?
子供の頃は速く大人になりたいと想っていたけれど
今はその逆で子供の頃に戻りたいと願ってしまう
毎日陽が暮れるまで遊んだ
どんな遊びをしたのかは忘れたけど
最近の子供みたいに部屋の中で遊んではいなかった
いつもいつも怪我ばっかりして
泥だらけになっていた
夕暮れを知らすのは鴉の鳴き声
あの日の空は高く澄んで
大きな太陽が沈んでいた
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