銃声などなく進む/yozo
一杯になる
粒子と風とその顔に焦点を合わせる
熱やニオイが皮膚を擦り
一気に世界が彩りはじめる
外は、それはもう感覚がバカになるように暑い
焼けたコンクリを歩くには裸の皮膚はまだ貧弱だ
それでも歩く
きみと歩く
ノロノロと太陽を見上げたりもする
暑い時に暑い中にいられる間は
枯れるまで汗をかいた方がいいと思うので
クーラーの屋外機のゴォンゴォンという音をききながら
暑い暑いとボヤきあって
喉を涸らし
ゆっくりと進む
隣を歩く影を見る
どんなにかこの状況が壮絶であるかを見事にさえずる饒舌に
聞き惚れて小さく笑いをもらす
油断して不満気にとがる唇に見愡れてい
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