白い手 /服部 剛
 

「 私は独り、夜の坂道を上る 」 

と闇の客席に語りかけていた 


( ピエロの亡霊が傍らから呼ぶ声に 
( 女は気づかぬまま 
( 暗い坂道を上り続けていた 


  * 


ネットカフェを出た僕は
朝の企業戦士の群から外れた場所に突っ立って
独りパンをかじっていると  
何故か無性に恋しくなって来る 


( 昨夜の飲み屋で 
( ふいに僕の赤い耳にふれた 
( 君の白い手のぬくもり 




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