レインミュージックはマホガニーの薄明で/たちばなまこと
 
マホガニーは薄明で 薄命の夜を始める
教室の窓から身を乗り出していたら
まさにいま
夢中で描いている赤い紫のペイズリーが
絨毯が
迎えに来ないかしら、と よぎる
若者よりもはしゃぐ現在進行中の記憶ではいつも
幻想ばかり食べている
地上から山の中腹までに登るグラデーションの光が
家々のあたたかさのパワーで霧雨にあわいハイライトを描いていた
私が立つこの教室も 私が持つ瞳の光も
こんなあたたかさを放っては届いているのだろうか
私のような誰かに
あのマンションの7階あたりではその誰かが
左手のかぎかっこをつくって捉えていたりするのだろうか
また気付くのに遅れた雨が 夜の始ま
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