私の中の女/ネコ助
 
望んだはずの
二人っきりの語らいは、
余りにも二人っきり過ぎて
時の過ごし方に困り出す。
ここには僕と君しか居ない。

こんな時
きっと互いに考えることは、
次の言葉を選ぶこと。
頭の中でのシミュレーションの語り合い。

同じ思いのそのために
僕の中の女が
君の中の男と話している。
瞳の奥に君の男が見えている。
君は男に、
こうして欲しいと言っている。
僕は女に、
幾通りもの語らいをしている。
そして、
最善と思う言葉が空気を震わせる。

本当は、飛びかかり、
かみつきそうな情熱を持ちながら、
そんな勇気もなかったのか、
紳士でいたかったのか、
互いの中の、男と女に試みて
やっと話していた初な恋。

あの頃、私の中には女がいた。

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