黒猫の便り/緋月 衣瑠香
まだ秋
なんていっておきながら
夕方の寒さは冬
部活が終わって制服に着替えていると
テニスコートの外に
学校で飼っている黒猫
<おい
お前は何をやっているんだい>
黒猫はただこっちを見てしっぽを揺らす
<おい
お前は何をやっているんだい>
座っている黒猫はじっと見つめる
<おい
お前は何をやっているんだい>
黒猫は目線を上げた
<・・・あ
お前はこれを見てたのかい>
にゃあ。
その声は
薄暗い天の冷たく光る半月を
一層と
冷たく見せた
もう冬だ
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