蜃気楼/しでん
相殺された躁と鬱が
外と ぼくのこころの かすかな温度差が
夜の顔をした蜃気楼を生み出した
生み出し続けた
その日から 星はメトロノームと化して
月はぼくを睨み続けている
でも きっと時計の針は進んでいる
もしもそうじゃないなら
夜行列車は もう日本を三周ぐらいしているのだろう
定時制高校の生徒は 働きもせずに勉強しているのだろう
公園では 猫の井戸端会議が延々続いているのだろう
だけど そんなことはない
ぼくだけが塞ぎこんだ夜のなかで置き去りにされていて
明ける気配もないのに太陽が昇る方向を見つめ続けている
悪夢のような風をうけて
少し身震いをしながら ぼくはひとつあくびをしたよ
戻る 編 削 Point(2)