ライオン/海月
壁のシミを眺め続けている
時間を潰す方法はこれしか知らない
退屈でも見ているしかない
やる事がないこの檻の中では仕方ない
嘗ての王も今は見世物でしかない
本能のままに生きる事も赦されず
理性で暴れ出す心を留める
叫ぶ声は家族の下へ
縞馬は全力で逃げ出す
怖い物は飢餓と縄張り争いのはず
硬いコンクリの壁は冷たく
上から見下ろされる事にはだいぶ慣れた
今は眠る事でしかやる事がない
そろそろ視力も落ち始めている
嘗ての王も今は走る事も出来ない
本能も思考を停止をして
ただ心臓が動いているから生きている
その瞳には何が映るのか?
家族は人工妊娠で作り上げた
野性の心を持たない自分自身の化身
その鬣は何の為にあるのだろう
その牙は何の為にあるのだろう
その爪は何の為にあるのだろう
静かな雄叫びは闇を裂き
遠き暮らす家族の元へ
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