手首 エデンへの変容/六崎杏介
 

 『カッターナイフからの逃走』

手首を切る。其の或る美の宿る、しかし多分に内省的に成りがちな行為に、多くの人間が行き場の無い血液を流している。
其の、或る種捨て子の様な赤い愛への憐憫から、彼等が捨てられるに納得のゆく形態、手首への処置を考案してみた。
まずは、思い出としてカッターナイフは棺に封印しよう。カッターナイフでは「カット」にしかならない。

 
 『用具、外へ向かう愛』

カッターナイフ、それはつまり「カット」のナイフである。
例えば、絵筆で描かれた物は「絵」であり、包丁で切るのは食材であり「料理」となる。正しく用いられた道具によってあらゆるジショウは変容する。
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