母のお守り 〜ある母子〜 /
服部 剛
亡くなる三日前に
お母さんがベッドの上で書いた
君への手紙をもらったよ 」
長い夜が明けて
彼は近所の喫茶店で
友から母の手紙を受け取った
便箋の封を開いてカードを取り出すと
空白の中心に
精一杯の、震えた文字が一行
( わたしは今も、ここにいます )
向き合う彼と友の間に、流れる沈黙。
この世に遺された母の字を
じっとみつめた彼は
再び便箋にカードを入れ
上着の内ポケットに
そっとしまった
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