月のこり/船田 仰
ーキング
トーキング
受話器をみみにあてたなら
海のおとがただするばかりで
かけらほどのきみもいなかった
ゆうべ見た映画のはなしをしたって
一分間でノックアウトされるのは
ぼくの、ほう
とっくの昔に集めつくした
多くの象徴的な困惑ばかり見えて
歩道橋にはフィールド
そこにもここにも
トーキング、と願いつづける顔のかたまり
星のみえないここからでも
きみの影が自転車にかかるのを想像することはできる
のみこみすぎた月は消えてしまって
ぼくはただ
受話器にみみをあてて
雨がふってくることをかんがえてる
トーキング
きみのかけらを盗むために
だらだらとたれながす日常なんて
珍しくもないのに
珍しくもないのに
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