ひとりぼっちの裸の子ども/佐々宝砂
 
もかく自動車の商品名の「言いっこ」となるとスーパーカー狂の弟には全然かなわなかった。逆に、童話タイトルや植物名の「言いっこ」となると、いつも私の独壇場だった。私の言った単語がかなり特殊な単語で、それを相手が知らなかった場合、相手は私の言葉を信じて未知の単語を受け入れることになる。このようにお互いの語彙が偏って違うものになってくると、どちらにとっても「言いっこ」は楽しくない。

私が「言いっこ」をしなくなったのはいつごろだったろう。たぶん小学三年か四年のころだったように思う。私の語彙はどんどん特殊化していて、私と似たような語彙を持つ人なんて私の母くらいだった。今はもう、私と母の語彙もずいぶんかけ
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