夕日のマフラー/杉菜 晃
 



一粒の雨が傘に弾いて
百匹の蛙になった
百粒弾いて
一万匹の蛙になった

一万匹は
すぐさま姿をくらまして
それっきり雨は止んでしまったから
微かに地面の濡れたところが
彼らを探る唯一のよすが

夢多き少し足りない男は
地中に隠れた蛙を探して
濡れた地面を掘った
彼は地面を掘って 掘って
堀まくった
四肢で土を蹴り飛ばして
臭いの正体を突き止めようとする
犬のように
彼は土を掘った

はたして蛙は出てきたか
出てこなかった
しかし彼は諦めない
いないはずはないと
彼は掘り進めた
掘り進め 掘り拡げた
はたして蛙は出てきたか
出てこ
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