削られる自意識と、楕円のうえでダンス/はらだまさる
 
そう、遠くはないから。
大丈夫。 
光の淵へ遊びに行こう。 
夏になると
綿毛の灰色と
安曇川の水と、
母さんのトルコ土産の
キーホルダーに付いた 
じゃらじゃらした青い目玉の
魔除けをしっかりと持って。 
ぶーん、ぶーん。 
湖から山に吹き上げる風が 
緑の草原をごうごうと
駈けている。 
突然降り出した群青色の、 
短い雨が大地を強く擦りつけて 
横文字の日本人が
銀の髪を振り乱し 
チェロとバイオリンの隙間を
奏でるように、 空に
羽毛で絵を描く。 
雨上がりの遊園地には 
壊れた観覧車が
転がっている。 
宇宙を模倣したペダルを
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