afterglow/たちばなまこと
 
夕刻よ もっと光をください
冬の息づかいが とても つめたい
雲のミルフィーユ レースの裾に
遠い日のさくらのような
幻想の海が広がっている

雲の山 空の海ね
幼い頬のかけらが 溶かされている
私だけが知っている
海よ

抱いた寝息も 家路を歩むため息も
さびしいね さびしいね さびしいねと聴こえるような
夕刻よ
海がおちてくる

ゆかないで 体の中の
燃えているたましいの種たち
あなたの二つの水晶玉も
海の中
さびしいね
遠い日の
さくらのお水に浸されて
靴底の乾いた音にも
伸ばした袖に隠れた手にも
もっと光を
黒目に灯る炎のような
命のようなあなた

暮夜への歌を 私だけに聴こえるように
鼻先におちたさくらの雫が ほぐれてゆく歌を

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