向かいの席/服部 剛
 
仕事帰りに寄ったファーストフード店 
一人座って夕食代わりのマロンパイを食べながら 
カウンター越しに君の姿を探す 

パイの中から舌先に広がる 
マロンクリームの甘さとうらはらに 
ぱさぱさとパイの衣(ころも)を落としながら 
僕の向かいの席にはいない 
君を想う 

( 今日は休みかな・・・ 
( 今頃どうしているのかな・・・ 

君は最近少し悩んでいるという 
好きなのかわからない男と夜を共にしているという 

カウンターの向こうで 
忙(せわ)しげに働いては 
レジ前の客に 
スマイルを浮かべる店員達 

( この手には
( パイを食べ終え 
( 空(から)になった紙の入れ物

僕は今 
誰よりも見たい 

君のスマイル 




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