老衰の美/田島オスカー
温かい麦茶があたしを癒してくれる
不可能なことばかりでもいいよって
稚拙ね、と彼女は笑った
それはそれは美しかったので
あたしは妬いた
一昔前の話よ、とまた彼女は笑う
彼女のほほの皺はとしつきだけでなく
その全ての美しさを誘い出して
そこにあらわしている
あなたと同じくらい若かったから、
もうずっと前のことなの、と
笑顔を崩さずに彼女は
泣いた
炭酸飲料が嫌いなあたしは
彼女のお話だけじゃなく
出してくれる温かいお茶も大好きだった
彼女が全てをほほに晒したように
彼女の涙も全てを
麦茶の美しい湯気のせいにしてしまおう
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