夜を夢想する海の協奏/前田ふむふむ
 
     1 序章

慎ましい木霊の眼から、
細い糸を伝って、子供たちが、
賑やかに、駆け降りてくる。
溺れている海の家の団欒は、
厳格な父親のために、正確な夕暮れを、見せている。
見開かれた季節の眼は、瞼を閉じると、
めらめら燃えながら、山なみで焚き火をする。
子供たちの瞳が輝く。
子供たちの口の中に、太陽が勢い良く泳いで来る。
子供たちの口の中で、涼しい風が、
優しく握手をする。
遊歩する印象が、
目まぐるしく口紅を塗る、多弁な秋色――、

その反転する境界線で。
  
木々は、厳かに朽ち始めて、薄れゆく、灰色の海の幻想を、
鮮やかに、わたしの胸に刻みつけ
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