フローチャート/ネコ助
 
グラスは唇へ。

酔った男の胸の内を、
言葉に照れる思いを溶かしながら
グイッと流し込む。

レーザーディスクの光の中に、
幻想の時間が映される。
言葉少ない二人の空間で、
君は濡れた赤い唇を咬んだ。

私の知らない内側の魅力が
キラリッと覗いた。
息を潜めている。
多分、自分からは言い出せない。

君は、
私の知らない流行の歌を歌い出す。
私は薄暗いボックスの隅で
聴いている目を見せている。

でも、本当は見ていない。
君に合いそうな幾つかの詩を
思いだしている。

それはバイロンか、ゲーテか

 美しいものは、歌う乙女ら
赤い唇は、語る手招き
うるんだ瞳は、口せぬ望み

そんな句をどこかにつなげようと
思っている。

グラスの中でロックが叫ぶ。
私の血も騒いでいる。
うるさい動脈流の圧力が
フローチャートを描き出す。

”IF SHE = LOVE THEN HOLD HER HAND
”GOTO L・O・V・E・H・O・T・E・L・


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