ピエロのハンカチ /服部 剛
ピエロは
いつも装っていた
彼のまわりには
いつも明るい日向(ひなた)があるように
ピエロは
どうでもよかった
彼のことを
まわりの人々がどう言おうと
ピエロは
いつもポケットに入れていた
色褪せた涙色のハンカチだけが
彼の寂しさを知る友達だった
夕暮れに
誰からも羨(うらや)ましがられる
ほがらかな笑顔で
日々出逢う友に
分かれ道で手を振って
ましろい満月が
眠れる世界を淡く照らす夜
気がつくと
いつもの闇に
ピエロは包まれる
( うっすらと鏡に映る
( 日中の化粧を落とした
( 人知れぬピエロの素顔
ポケットから取り出し
手のひらの上にのせたハンカチ
闇に浮き 朧(おぼろ)に光る 涙の色
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