森の世界/ネコ助
 
清水の、冷やめきに足をつけ
苔生しの岩に座り、じっと目をすえ
水の空を見つめている。

私の意志は、音となり
風の通りを走り抜け、広がった。
音の波は、あの岩山で回析して、
森の谷間の小川に届く。

川面の小さな流れ葉は、
私の意志に共鳴し、それでも森の法則に従い
ゆらゆらと、私の元へと近づいている。

私の声は消えた。
しかし、水の中に今も残り震えている。
透きとおる水の分子や、
花崗岩の結晶構造の隙間の中で、
今も私の声は、こだまする。
森は聞いているのだ。

薄緑の木漏れ日、葉音が私に歌う。
体温を永久に吸い続ける水の大きさや、
私の意志を聴き尽くす、森の世界の偉きさを。

一枚の浮き葉が、私を慰めに 今 流れ着いた。


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