指/松本 涼
秋が風になびく
僕らはぼんやりと空を見上げながら
くっきりと今を抱いている
君の話す言葉が
木々の合間に踊り
遠い獣が夕暮れを呼びはじめる
生温いカフェオレの缶
高い枝の上で大きく羽を開く黒い鳥
年老いて切り取られた太い幹に
よじ登っては飛び降りる幼い子供
君の名前
僕らが指を伸ばして触れたものは
僕らが触れたときのままにそこに在り
二度とは触れられない永遠だ
次を待たず何も探さず
可笑しいくらいシンプルに
瞬間は僕らを繋げている
そして僕はそっと
君のたましいを口に含む
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