ラーメンといふ名前の猫/三州生桑
「もしもし?」
全く、この街は気品だらけだ
もっとも、すべて道端に投げ捨てられてゐるが
「もしもし、私を誘惑してよ」
愛する人が気品を投げ捨てた時
私は注意したけれど
彼女は逆ギレ
「私を口説いてちゃうだい」
私は
自分に甘く
他人に甘く
猫にも甘いが
愛する人にだけは厳しいのだ
ラーメン!
だから私は気品を拾ひながら
この街を駆け抜ける
ラーメンはどこに行った?
私のことが大好きなくせに
引っ掻かずにはゐられない猫
「早く」
気品は二ツ並べて捨ててあることが多い
つまり、カップルが揃って捨てるわけ
「本気?」
「ええ、早く」
「詩人が口説くと、ちょっと凄いよ」
ラーメン!
「愛してるにゃあ」
「・・・バカ」
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