取るに足らないノイズ/紫音
 
しとしとと降り続ける雨垂れが
カノンのようにリズムを刻みながら
網膜を穿ち男達を溶解させていく
ボルトで締め付ける頭蓋の奥に
ナイフでイニシャルを
蝋で消えぬ印章を残す
新聞や雑誌から千鳥足の心を掬い上げ
掴んだはずの手はいつの間にか薄汚れ
フィクションとノンフィクションの境界を漂う
紫煙に霞みゆく魂の音色が
ギリシャ人のパラドクスに飽きた頃
路地に丸々仔犬はただクンクンと呻く
別にルイスキャロルや宮崎駿のコンプレクスが
赤い霧の彼方に包み隠されたとして
コートの下はただのロリータだとして
それでも歓声と共に迎え入れるだけの
擦れた大
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