夕焼け色/海月
シャッターの閉まった古本屋を横目で見る
薄汚れた窓ガラス越しに部屋を見る
手持ち無沙汰の棚が何かを語りかけてくるようで
僕は静かに瞼を閉じた
名前もない野良猫が目の前を横切った
首には小さな首輪でミーと彫ってあった
その名を口にしたらこちらを見て
遠くへ行ってしまった
泣くほどに悲しい出来事でもないけど
心が空っぽの時には悲しいもので
自然と涙が流れる
駅の改札口からは人が止む事無く流れ
その渦を僕は意味もなく眺め
神経が磨り減る音を聞いている
自ら終わらせた愛の形
二度と戻る事ないと知りつつも
もう一度だけやり直せると望んでしまう
運命の赤い糸が小指と小指に結びついているのなら
自らその糸を断ち切るだろう
その方が君を真実に触れさせずに傷付けずにすむだろう
嘘でもイイから嫌いなフリを演じた
今までありがとう
交わした言葉の最後は見届けないままに
最後の優しさを夕焼けの色に混ぜて
僕は君の下を去る
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