「人」/服部 剛
 
一日の疲れを 
シャワーで洗い流していた 

湯舟には 
二本の髪の毛が組み合わされ 
「人」という字で浮いていた 

水面でゆっくり回って逆さになり 
二本の毛の両端がくっついて 
羽ばたく鳥の形になった


   (
   ( 


端と端は少し離れて  
ほほえむ二つの目になった 

ひとすじの心で支え合い 
弱さを振り切るように羽ばたいて 
皆で輪をつくりほほえむ 

そんな明日を願いつつ 
湯舟に大きい蓋(ふた)をして 

今日という日を閉じる 




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