パリ/
もも うさぎ
あの頃は
毎日飛んで
毎日ろくに食べなくて
病気の巣窟だ、なんて言われながら
あたしはただ
目を開けているだけで
きっと何も見ていなくて
でも愛しいものが何かは分かっていた
底抜けの孤独も寂寥感も
故郷の面影と、祖父の愛以外は
なんでも犠牲にした
鬼ツバメを頭に乗せた女は
もうとっくに死んでしまった
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