『殺神犯』/しろいぬ
 




幾億の刃の葬列

それが彼の命を略奪した





彼に縋らんとその衣の袖を引き

地上に堕としめた結果がそれだ

彼ほど不幸な存在はあるまい





すべての喜劇の監督に彼は就任し

すべての悲劇の脚本に彼の名前が記された





人々は彼の物語を観て

時には誉めそやし

時には愚痴愚痴と文句した





誰もが彼に

「もっと楽しい物語を! 全てに幸福な結末を!」

と求めた





しかし物語は変わらず

世界は悲劇と喜劇を繰り返す





人々はいつしか 縋るその手を刃にかえた











そして今











我々の前には









幾億の刃に貫かれた











彼の死体が転がっている


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