柿/
海月
紅く憂いに帯びた君
その紅い着物を丁寧に脱がせば
優しい色をした君の素肌を目にする
舐めればほんのり甘く
齧ればほんのりと苦く
双方の思いは交差したままに
僕らは時の流れに身を任せた
夕焼けの時は知らぬ間に速くなり
足並みは揃う事無く一歩先を歩く
その闇の中で僕は背中を見るだけ
いつか消えてしまう
今夜の星の様に愛おしく思えたら良いのに
熟し地面の上で中身を零した
そんな柿を横目に僕らは静かに帰路につく
街並みは静かに明日を迎えようとしている
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