夕凪河川敷/藤原有絵
淋しさが何処から生まれるのか
そのような話題が上ったとき
それらはすべて
河から生まれ
いずれも河童の仕業なのだ
そう言ったのは
この国の伝承を探究する男で
昔神田の書店で知り合った
彼 曰く
河から生まれた淋しさは
薄く空に溶けて
街を満たしてしまうらしい
だから
不用意に夕凪時の河川敷には
近づかないことだな
喰われるぞ
僕は伝承に対し
肯定も否定もしないが
未だ
河川敷で
淋しさに喰われた人間は知らない
ただ
時折
胸の焼けるような橙をみると
決まって河川敷で泣いている
誰かを目にする
はっとして
彼の胡散臭い言葉を
ぼんやり思い出すのだ
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