冬桜/海月
 
秋風に震えながら帰路を辿る
色づいた葉々が擦れる音が流れ
それはあまりに儚く
夕焼けの明るさに目を閉じた

海道沿いのバス停は潮風が吹き
砂が波に運ばれる音が聴こえ
それはとても美しく
時間の流れを忘れてしまう程に
昨日の夢は心の中で見続けていられる

春に開花を待つ桜
冬にひっそりとこの桜は咲く
初雪と同じ頃に散り出す
忘れなくちゃいけないのに
どうして、君の事を思い出してしまうの?

静かに時は刻まれる
歯車は緩やかに廻り続ける
それは何も変わらない
何も変わらないのは変わるのが怖いから
私は今日も貴方を思う

信じれるもの一つ
支えるもの一つ
心の中で咲かぬ花の種を受け止めてくれる

目の前のバスに乗ればこの街と「さよなら」出来るのに
どうして、乗れないのだろう
未だに君を愛しているからなの?

予定時刻を迎えバスは私の目の前を通り過ぎた
闇の中には私が静かに佇むだけ・・・
桜はひっそりと散り始めた

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