天使祝詞 ルシフェル/The Boys On The Rock
 

スーツ姿の
片翼の折れた異形の天使の登場に
親鳥の目は色を失っている
傍らで 甘えて鳴く私の雛
思わず 感動の再会を期待し にこりと微笑む私
ただ 私のことを 人間として認識した親鳥は
帰したばかりの雛の目を 首を 頭を
鋭いくちばしで つつきはじめたのだ
(父の摂理は堅固だった)
やわらかい粘膜質の頸部から
先ほど感じた あたたかな血流が噴出し
ほどなく 哀れな 私の雛は こと切れたのだった
愛おしい雛の 息絶える様子を
一部始終見せつけられた私は
天を仰ぎ その一点をにらみつけた
私は生命を惜しむもの
父よ
今でもそれは変わりませんよ と
いつもの呪詛の言葉を投げつけ
山積みの仕事の待つ 会社へ
足早に出勤したのだった
[グループ]
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