砂丘の少年/服部 剛
 
仕事を終えて入った喫茶店の夕食前 
紅茶をすするカップを置いてほお杖をつき 
今日という日を振り返るひと時 

名も無き群の
無数の足音が響く 
駅構内の朝

職場の仲間と 
腹を抱えて笑った昼休み 

食卓を囲む家族が
「おかえりなさい」
と迎える夜 

どの場所にいても 
( ピエロの仮面を被(かぶ)ったまま ) 
私の身の回りにいつも 
茫漠(ぼうばく)と広がっている 
砂丘と空の幻


   *


( ハートの太陽が昇る闇色のTシャツを来た少年 
( 脱いだ上着を肩にかけ 
( 砂丘の果てへと歩いてゆく 

( 白昼
[次のページ]
戻る   Point(9)