砂漠へ行って死のう/しゃしゃり
女にふられたので、
好きで好きでたまらない女にふられたので、
砂漠へ行って死のうと、
そのままとかげとかハゲワシだとかに、
食われてしまおうと、
十月の運動会で俺は考えた。
町内会のかけっこで張り切って走った。
どうせ景品は鉛筆と温泉の素なのだ。
だが俺は赤道を駆けるように駆けた、
そこが砂漠でもあるかのように。
第三コーナーで膝が外れた。
倒れて空を見上げ、
うろこ雲がきれいだと思った。
とんぼが逡巡するみたいに、
俺の上がり下がりする胸のうえに留まった。
死にそこねたらこんな校庭の上だ。
死ぬのは五十年待とう。
べつに百年でもよいが、
さしあたって五十年待ち
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