電車の窓から/結城 森士
この夜には日溜まりがまだ残っていて
所々に家の明かりがつき始めていた
それなのにこの灰色の町では
何処を探しても星空は見えない
電車の窓から
あの人の家を探している
もし貴方が笑ってくれるなら
僕は貴方の星を地球の頂上に揚げて
世界中で一番美しい光を証明したい
電車の窓から
あの人の家を探している
夜には陽だまりが溢れかえっていて
まるで楽しかったあの頃のように
こぼれだした感情が造った透明な川は
まだ本当に其処にあるのか
もう一度貴方が僕に微笑んでくれたなら
この夜は本当に暖かくなる
そうやって考えながら
ずっと目を瞑っている
光は瞼の裏を過ぎ去っていく
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