思い出へ/海月
波音だけが静かに夜風に乗り
私の髪を通り抜けた
海面を漂う月
蟹は静かに砂に潜る
意味もなく
浜辺に文字を書いた
同じ波は二度と繰る事無く
私の足元をすり抜けて消えた
秋の海は夏の暑さや冬の寒さや春の暖かさ
どれとも違う感情が溢れている
何処から流れ着いたガラス瓶
半分に割れたヤシの実
私が存在する理由とは?
問い掛けた言葉は悲しく宙を舞い
光の届かない深海に沈む
明日、目覚めたら帰ろう
心の中にある故郷(おもいで)へ
そっと口付けを交わし
全てを忘れて生きていく
もう二度と迷ったりしない
だから
今宵は静かに眠りつくよ
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