紫煙/
岡村明子
で
高架下の狭い歩道の脇に
くの字になって
最期
しめったコンクリートに
花もなく
線香もなく
訪れる人もなく
あと20歩も歩けば
大病院がそこにあったのに
知らない人の死に
涙は出ないが
看取られることのなかった
魂のわびしさを思う
せめて
紫煙の中に
孤独な魂の
昇華を祈り見上げると
きゃ
という
断末魔の声をかきけして
京急線が走り去った
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