せっけん /服部 剛
プラスティックケースの上に
並んでる、ふたつのせっけん
小さいほうが、お婆さん
大きいほうが、息子さん
「 生まれた時は逆だったのに
わたしに向かってハイハイしてたのに
あんたいつのまに、大きくなったねぇ・・・ 」
「 母さんずいぶん小さくなっちゃって・・・
そんなに身をすり減らして、
誰かの汚れをきれいに落として来たんだねぇ・・・ 」
ふたつ並んだせっけんは
今日も疲れた誰かの汚れを落とすでしょう
明日も目覚めの顔を洗うでしょう
まっ白だった昔より
少々汚れた身だけれど
ずいぶん角もとれてきて
やがて欠片(かけら)となって消えるまで
誰かの両手に挟まれて
黙って泡をたてるでしょう
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