瞳の歳時記/一般詩人
僕が知っているのは
大手町で働き始めた頃のあなたの瞳からだ。
コンクリートの照り返し、
液晶モニタの照明、
窓の無い会議室の蛍光灯、
非常灯の赤いランプ、
最終退室の暗闇、
それがあなたの瞳の色だった。
あなたとは小規模案件を一つ共に仕上げただけの間柄だったが
先日会社経由でエアメールの絵葉書が届いた。
本文はない。送り主の宛名も住所もない。
葉書をめくり、送り主があなただと知れた。
絵葉書にはあなたの瞳だけが写っていた。
何処か判らない国の、何処かわからない空の
何処までも深い青と
大地の黄金色が
くっきりと輝く瞳だった。
今は
それがあなたの瞳の色になっている。
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