十三夜/千波 一也
 

さなぎがさなぎを終えようとする

待ち受ける憂いの数々は
渦を巻く歓びのなかで
やわらかに
刃となる

饒舌なのぞみはいつも
逃れるすべを根絶やしにして
油彩画はただ
鱗粉にまみれかがやき
埃をかぶる代わりの
優美な劣化が
満ちてゆく

責めるも囲うも
たやすく叶ってしまうがゆえに
まぼろしの横顔は
明白に
澄み渡り
砂上に砕けた器の欠片を
かたや葬り
かたや迎えて
知らずの不動の鍵穴たちが
狂い咲く

沈黙がまばゆい程に錆びてしまう

雨は酸にもなるだろう
闇は温床にもなるだろう
わすれてしまえば
幻聴さえもなつかしく

狩人はおのれのための
狩人を待ちながら
やはりだれかの
狩人として
瞬きのなかに無数をあやめて

金銀の偽りを暴くのは容易くはない

届かない者たちの
ただしい嘆きだけが
限りある鏡に静かに揺れている



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