羽抜け鶏/杉菜 晃
 
羽抜け鶏は
見かけほどにはこたへてをらず
日を直に浴びられるだけ
血潮に赫いて
田舎道を闊歩する


見よ
いつもは目を皿にして
獲物を追ふ狐が
鶏冠(とさか)王の惨たらしい外貌と
血気の勇ましさに
笹薮の奥へと後しざりする


鶏冠(とさか)王が笹薮に向き直り
時をつくるものなら
狐は

ぞぞぞぞーつと

笹の葉擦れも凄まじく
後方の丘へと一直線に遁走する
   
   パ
   サ
   パ
コケコッコーー
   サ
   パ
   サ
   パ
   サ
   パ

横長の文字は翼のつもりだが
左右不揃ひなのは
羽抜け鶏のことゆゑ致し方ない



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