ひまわり仏 /服部 剛
夏の夜に
いくつもの太陽を揺らすひまわり達
仕事帰りの疲れた男に
わさ わさ わさ わさ
大きい緑の手のひらを振る
日々の職場では
密かな善意を誤解され
ぶーぶーぶーぶー
陰口言われることもあり
人間(ひと)を愛するってこたぁ
まったく甘いことじゃなく
誰かと言葉を交わす舌先に
時には苦汁ばかりが滲(にじ)みます
馬鹿と笑われても
阿呆と罵(ののし)られても
夏風に揺られながら
緑の背筋を伸ばして
荷物背負った人々に
いつも笑顔を咲かせてる
あのひまわり達のように
太陽の花を開こうと
毎朝振り出しに戻っては
誰かのささいな一言(ひとこと)に
顔を顰(しか)めて枯れています
猫背で歩く男は夜道を振り返ると
小さくなったひまわり達は遠くから
わさ わさ わさ わさ
緑の手のひらを振っている
男も大きく手を振って
家路に着いた
* 自家版詩集「明け方の碧」(01年)より
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