氷った街角/白雨
 
灰色の空を背景(うしろ)に
 黒い背広を着た男、
 街燈の、直立不動の寂しさに、
 北風に、灯は揺れる・・・・・・・その昔、
この道を通(かよ)った男が
 そこに見た嘘の女を
 どれだけ愛したことだろう。
 その人はもういない。
 その代わり、
 待ちくたびれたあの男、いつのまにやら
 街燈になり、灯を点す。
 
  あれから幾人の男たちが、雪を見て、
 街燈になったことだろう。
 列柱のごとく、
 兵隊のように、
 寒さは肌に凍み透る。
 朝になれば そのかがやきも消え失せて、
 ひと吹きに
 吹き消されゆく。
 男は、灯のように、か細い。
 男は、街燈のごとく、ひょろ長い。
  
氷った街角をひとりのおんながとおりすがる
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