ゆびあと/服部 剛
 
OLの群が
小脇に抱えた「空洞」に
秋風が吹き抜け
小鈴が鳴るのを横目に
別れた3人がほじった
指跡残る輪菓子(ドーナツ)の
ラップに包んだ欠片を
コートのポケットに入れて

北へ、北へ ・・・

「あるかなぁ ぬくもり」
「歩かなぁ 独りの手でえぐる夜を探して」
 と一人ごちて

  こつ こつ こつ ・・・・・

腕時計を巡る秒針の音で
心臓に内蔵されたメトロノームのリズムで
夜のアスファルトに刻みゆく 渇いた足音

   こつ こつ こつ ・・・・・

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