ゆびあと/服部 剛
 
金髪の中年
若い未亡人
ぎこちない青年

3人はうどんの出る喫茶店で
食事を共にしていた

丸テーブルの真ん中に
輪菓子(ドーナツ)が置かれていた

スポンジの空洞の上で
3人は組み合わない小指の結び目を保とうとしていた

( その間にも
  不器用な左手の箸でつまみ上げた
  うどんがそれぞれの口に吸いこまれる
  「ずずず」
  の3重奏は終わりを知らず
  やがて 日は 暮れた )

ねぎと七味を浮かべた
冷めたおつゆの残り香ただようどんぶり
の傍らに
消えそうで消えぬ蝋燭(ろうそく)の灯がにこやかに踊り
3人のほほに笑みをもたらす

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