自転車/海月
自転車の後ろに君を乗せて出かける
普段は誰も乗せないからその重さに少しだけ手間取った
「二人乗りは危ないよ」と君は口を尖らせた
僕は「平気平気」と嘘を一つ吐いた
本当は心の中では怯えていていたんだ
ペダルの重さがギアを一番重くしたときに似ていた
一漕ぎ一漕ぎに全力を尽くす
何かに追われているわけでもないのに
僕はスピードを上げようと頑張った
その為に君の言葉は風に流された
「スピード上げすぎだよ」と君の言葉は風を伝う
僕は「平気だから」と根拠もなしにペダルを踏んだ
逃げ込むように大通りから裏通りへ
裏通りから坂を上って
街並みが小さく見えるこの場所から言
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)